BRM108鎌倉300。
200kmを走り終えたPC4の復路伊豆高原で、同行していたたぴもさんの両脚がつるというアクシデント。
すぐにコムレケアで手当てしたのだが、脚を伸ばすことすらできない重傷。
この日はたぴもさんと一蓮托生することに決めていた。
なのでこのトラブルに見舞われた瞬間、伊豆急の電車のダイヤを計算していた。
とりあえず脚をだましだまし近所のファミレスまで移動し、
ツイッターを見るといしこうさんが伊東まで応援に来ているという
ツイートを発見。すかさずリプライを打つと、
「DNFするならピックアップしますよ~」という天の声。
ああ、これで安心だね、つらかったけど楽しかったねという話をしながら
ファミレスでいしこうさんを待っている間、
ふと、『もしかしたらおれ、走れるんじゃないか?』という考えがひらめいた。
あわててキューシートをチェックすると、250km地点のPC5の真鶴のゲートクローズは22時20分。
時計を見ると現在の時刻は19時30分。
「えーと、おれ走ってみていいかな?」
「走ってください!」
ということですっかりリタイヤ気分だったが急遽チャレンジすることに。
走り出して5分で後悔した。
寒い。
眠い。
食べたばかりのおなかが痛い。
夜の伊豆高原から県道109号はところどころまったく明かりがなく
自分のライトだけが頼りである。
鬱蒼と茂る木々の間からは銀河まで見えるような星の洪水。
夜の闇が怖い。
よく見えない路面が怖い。
背中に張り付く亡霊が怖い。
ぎらぎら輝く星が怖い。
ブルベは鈍感力で走るのだといしこうさんは言ったが
私はあまりに敏感すぎる。まるで子供のようだ。
それでも漕ぐ。
海岸線でたぴもさんを乗せたいしこうさんの車が
追い越しざまに声援をくれる。やめるわけにはいかない。
熱海市街まで11キロ、時間はあと1時間。
ゲートのある真鶴まではあと何キロなんだ?
踏みまくるけどスピードは出ない。
猛烈に腹が痛んできた。
苦しい。
トイレに行きたい。
止まって休みたい。
タイムリミットが恐ろしい。
もうずっと登っている気がする。
下りはあまりに短く、わずかに汗ばんだ上半身が凍りつくようだ。
網代を越え、熱海の市街を突破し、伊豆山を登り湯河原へ。
時間はあと30分足らず。
湯河原から真鶴の距離がまったく思い出せない。
何度となく走ったことのある道なのに。
湯河原から登ってしばらくすると、滲んだ目に白地に赤と緑の看板が浮かぶ。
え?セブンイレブン?まさか、こんなところにあったっけ。
そのまさかだった。
真鶴駅が左側にある。間違いなく目標の250km地点のPC5。
震える手で自転車を停め、店内で真っ先に目に付いたホットココアをつかんで
レジに差し出すと打刻は22時10分。間に合った!
トイレに駆け込み、軽量化しながらたぴもさんに電話で報告。
「間に合いました!10分前!」
「うおおお、ゴールで待ってますよ!」
なんとありがたいことにたぴもさんといしこうさんがゴールの逗子で
待ってくれているという。残りは50キロ、小田原からはほとんどフラット。
なのにこの50キロが長かった。
ひざが痛い。
腰が痛い。
新品のパッドが股間に擦れて痛い。
気がつくと記憶が飛んでいた。
江ノ島が見えてきた。ゴールの逗子は近い。
時刻はすでに25時、ゴールのタイムリミットは26時。
25時34分、300kmを走り終えて逗子に着いた。
いしこうさんとたぴもさんは寒い中外に立って待っていてくれた。
感激でちょっと涙ぐむ。それより鼻水が垂れ流しで感動も台無しだ。
そのあと26時半まで3人で話し込んだ。
いい大人がこんな他愛もないイベントに夢中だ。
自宅であきれているだろう家族よ、今夜ぐらいは大目に見てくれ。
(あきばっくす)
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