メイドさん学科自転車部のからたろーぶちょーが送るロングライドレポート、連載開始しました。

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個人的には、ロングライドは1人で走る方が気楽だ。そう思っている。
ただし、トラブルさえなければ。

トラブルが発生した時。それも連続して発生した時。リカバリするスキルと必要なリソースがなければ完走できない。
そういう事態を考えるなら、仲間と一緒に走る方が賢明だ。
第2回佐渡ロングライドでは、まさにそういう事態に遭遇することになった。

ちょっと話を戻して。第1回サドロングライド(違)は雨の中、ほとんど全区間を1人で走った。Aコースの参加者自体少なかったから。
ただ、この時は少なくともアームウォーマを着けていれば夏用インナー+半袖ジャージとビブで走れる程度の気温で、寒いと感じる場面はほとんどなかった。
大佐渡を回り込むまでずっと追い風で前半脚を温存できたおかげもあって、後半の向かい風にも我慢ができた。

唯一困ったのはサイコン(CATEYE CC-CD200N)が雨に殺られて速度と距離が計測できなくなってペース配分が不可能になったことだけど、ミスコースの心配のない一本道だったから、完走の妨げにはならなかった。

さて。同じく雨に見舞われた第2回サドロングライドの話をしよう。

スタート前からずっと冷たい雨が降っていた。冷たい風が吹いていた。メイドさんジャージに気付いたカメラマンにカメラを向けられて雨具を脱いだぼくたちは、撮影終了と同時に脱いだ時の倍の速度で雨具を着直した。
このままだったらやめ(DNS)ようか、という話まで出た時、不意に雨がやみ、薄日が射した。しかしそれは罠だったんだぜ。
また雨が降り出した。そしてスタート前のセレモニーが始まった。今さら列から外れるのは無理だ。
さっきのつかの間の太陽は、ぼくたちにDNSを許さないための罠だったと気付いたが、もう遅い。

挨拶に立った新潟県副知事の挨拶は簡潔なものだった。
私もAコース210km走ります!
と言って上着を脱ぎ、ジャージ姿になった。をを!仲間だ!

スタート。
しかしドロドロのグラウンドを歩いたクリートには泥が詰まっていてペダルがはまらなかった。
いったん止まって指で泥をかき出してようやくペダルをはめた。
チームメイトは止まって待ってくれていた。済まない。

海岸線に出るまでは、単に雨がうざいだけで済んでいた。まだ。
海岸線に出たとたん。風が。向かい風が。ぶち当たった。
九尾さんのビニールカッパがぶわさぁ!とぼくの鼻先に跳ね上がって酷く邪魔だった。

今回はカナサイさん九尾さんWillさんと、脚のあるアシストが3枚もあった(阿羅本教授は体格が違い過ぎて後ろについても風除けにならない)んだが、その列車に乗り続けるだけの脚がぼくにはなかった。
アベにしてあと1Km/hか2Km/h落としてくれないかなーと思いながら走っていた。

序盤の平坦ではそんな感じ。
民宿たきもとを過ぎ、最初のASは予定通りスルー。そして途中から微妙なアップダウンが出て来る。
上りでは遅れる。しかし下りではアイオロス5.0のおかげで何もしないのに先頭に出てしまう。そして続く平坦で吸収される。その繰り返し。
ペースが一定しないので、チームメイトはうざかったと思う。

雨と風に叩かれながら走っているうちに、どうしようもなく冷えて来た。
しかしメイドさんジャージの中の人代表としてはメイドさんジャージで走る必要があった。だからぼくは雨具は着けていなかった。

それでも耐えられたのはDECCA半袖インナーの前身に張られた撥水素材のおかげだ。冬のベルギーのシクロクロスに使われるというのは伊達じゃなかった。縫製は雑いけどな(笑)

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前年と比較して参加者が大幅に増えたこと、スタート順が遅かったこと(前年は確か2列目だった)で、ASは混雑していた。特に男子トイレが大渋滞していた。普通は逆だと思うんだが。
佐渡ロングライドではASには補給に寄るだけにして、トイレはコース沿いの公衆トイレを利用する方がロスが少ない。

全長1.6Kmの長いトンネルに入ったとたん、阿羅本教授が絶叫した。
「もうあと180km、全部トンネルで良いから!」
しかしここはサドだ。ぼくたちに安息は許されない。
トンネルの中はしんしんと冷えて来る。後方から車の轟音が迫って来る。
追い立てられるようにして外へ。再び雨の中へ。

Z坂が近づくにつれ地形はだんだん険阻になってくる。佐渡一周線は海岸の断崖絶壁を避けて上る。そしてぼくが中切れする。そのとたん。断りもなくメイドさんトレインにぶら下がっていた連中が隊列の隙間に続々と割り込んで来る。
後ろにつくのはともかく、先頭交代に参加しないなら割り込むなよ。

ASで補給した後、土砂降りの雨に耐えかねて前年ASだった岩屋口でウィンドブレーカを着込んだ。しかしZ坂を上り始めたとたん地形の関係で無風状態になる。雨もほとんど当たらない。今度は暑くてたまらない。結局すぐ脱いだ。

Z坂は見た目のインパクトと高度感は凄いんだが、まだ序盤になるのでそんなに酷い目には遭わない。問題はその先の大野亀だ。こちらの方がきつい。地味にきつい。

土砂降りの雨の中、叩きつける風の中、ハイカーの人たちが大野亀を上って行くのが見える。何が楽しいんだと思う。向こうもぼくたちを見てそう思っていたんだろうけど(笑)

終わったと思ったところが半分というのが佐渡のコースにある坂に共通する特徴だ。前年に走って知っていてもきついもんはきつい。ぼくが遅いだけなんだけどね。

やっとこさ長い坂が終わり、待望の平坦。ここはASまでアウター踏み倒す。べったりと濡れた路面。鉛色の海。鉛色の雲。暗い森。そういったどんよりした景色がびゅんびゅん流れる。それはそれで悪くないぜヒャッハー!(笑)

ASでおにぎりを補給した後、再びトイレ渋滞。
ASを出ると、暗い森の中のダウンヒル。
下りは突撃!ウラー!せざるを得ない。
そうするとすぐに終わっちゃうんだけどね。

大佐渡の裏側に回って来ると、しばらくは概ね平坦。
しばらくは地形が盾になるので概ね無風。
しかしここは佐渡だ。いつまでも平穏な状態が続くはずもない。サドだけに。

海岸沿いの概ね平坦だけど地味なアップダウンを繰り返す地形を雨に叩かれながら走り続ける。次のASのある両津のあたりはずっと対岸に見えている。しかしいっこうに近づいて来ない。
参加者はばらけ、ぼくたちしかいない。
鉛色の海と鉛色の雲。時々漁村。

思い出したようにコース脇に止まっている参加者を見かける。たぶんパンクだ。
特に問題なさそうなのでそのまま通過する。
というか、情動とかそういうもんはほぼ停止していて、あー誰か止まってたねーというだけなんだ。
雨の中でペダルを回すのだけが人生なんだ。少なくとも今は。

両津の町が近づくと、コースは完全など平坦になる。その代わり景色は全く変わらなくなる。サイコンが動かなくなったまま走った前年は、永久にこのままなんじゃないかと思ったくらいだ。今回は残りの距離がわかってはいたけれど。それでもやっぱり両津ASはなかなか近づいて来ないんだ。

ようやく両津ASに到着。
ここまでで約100Km。半分来た。しかし本当にきついのは170Km地点の深浦を過ぎた先なんだ実は。